辺境カフェ café frontière

辺境を愛する旅人の書

「束ねないで」「決めつけないで」

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わたしはわたしです

わたしは、子どもの頃から、「女の子は、ピンクが好きでしょ」など、束ねられ、決めつけられることが、大嫌いでした。たぶん、それに反抗して、女の子らしいことは、わざと拒んできました。今でも、色はピンクはあまり好きじゃなくて、青が好きなのはその頃からの影響がありそうです。


今、思えば、子どもの考えることなので、「女の子だから、と決めつけられるのがいやだから、男の子っぽくしよう」、AかBか、というぐらいしか、選択肢がないと思っていた気がします。


その後、わたしは、高校時代がとても恵まれていました。とても個性豊かな女の子たちが、生き生きと自己表現ができるような、本当に面白い女子校でした。その経験から、女の子バンザイ、女に生まれてよかったな、と思えるようになったし、その後、社会に出てからも、女性がどんどん自由になれる時代の流れに後押しされて、先入観や窮屈さから自由になれたと思っています。


この新川和江さんの詩は、女性らしさの生き生きした躍動を感じて、とても共感を覚えます。

わたしを束(たば)ねないで
あらせいとうの花のように
白い葱のように
束ねないでください 
わたしは稲穂
秋 大地が胸を焦がす
見渡すかぎりの金色(こんじき)の稲穂

新川和江 『わたしを束ねないで』より
http://www.sankei.com/life/news/151130/lif1511300026-n1.html

女性の自立支援?

今、自分自身は、女性だけれど(女性だからこそ)、制約のない自由を満喫しているわけですが、世界全体を見れば、女の子に生まれたことで、教育を受けるチャンスが小さくなったり、将来の可能性が限定されてしまう、というケースは、色々あり得ます。


モロッコでも、統計でみたら、特に村落部で、女子の中学校就学率は男子のそれより、だいぶ低かったりします。シディイフニ近辺は、あまり保守的な文化ではなく開放的な雰囲気なので、女性が、外にでて仕事をすることに、宗教的、文化的、心理的な抵抗はだいぶ少なそうですが、だとしても、女性の方が、男性よりも実際の仕事の選択肢や、チャンスが限られてしまうという現状はあるようです。


それは、確かにそうなのだけれど。わたしは、当初モロッコに来た頃のように「地場産品の商品開発や販売を促進することで、女性の自立を支援したい」などと口に出すのは、だんだん、嫌になってしまいました。結果としてそういう社会になっていったらいいな、という気持は、引き続きあるけれど、わたしがしたいこととして、語るのは、違和感を感じます。


どんな違和感かというと。。。


「女性の自立支援」という用語。開発コンサルタントの時は、日々とてもよく目にしたような用語だけれど。今、さて、自分が具体的に人とあって、何か行動しようと考えた時に、目の前で繰り広げられる、人々の様々な暮らしの、どことも、かみ合わないのですよ。言葉が浮いている。


「女性」と、束ねているのは、誰のことなのか? その女性は、今、「自立」していないのか? それでどんな問題があるのか? そもそも、今どういう状態にある人が、どういう状態になると、「自立」なのか? その言葉を使っている限り、そういう具体的なイメージが、何も湧いてこない、むしろ思考や観察の能力が停止してしまうような感じがします。

「モロッコの村落部の女性が自立していないから、問題がある。自立できるように支援が必要だ。」と一面的に考えるのは、ステレオタイプに束ねて、決めつけているように感じます。


そして、何か固定したものにラベルを貼っているようで、日々を生きている、生身の人間という感じが伝わってこない。


全体として大きく俯瞰して見た時には、そこに問題があるように見えるとしても、実際に、目線の高さで見た時に、一人一人がどう生きているのか、どう生きて行くのか、は、また別の話。


一言でいうと、「お役所的用語」、「政治的用語」なのだと思います。役所や政治家や、開発コンサルタントが、そういう旗をあげて活動することを、わたしは、否定したいわけではない。むしろ、賛成です。


でも、ひとりの人間としてのわたしが、日常的に目の前の人々と出会う時に、「わたしは女性の自立支援がしたいのです」とは、言いたくありません。


腹の奥には、「女性が自立できるような社会になったらいいな」という願いは隠し持ちながらも、日々を生きる中では、同じ目線に立って観察して、聴きとって、話をして。その中で、具体的に誰と何をするのか、自分ができること、したいことを見つけたいのです。


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