イラクのクルド自治区には、10月14日からシリア北東部(トルコ国境に近いラスアルアイン、カーミシュリ、ハッサケなど)からの難民が継続的に入ってきています。UNHCRを中心とした人道支援団体と、イラクのクルド自治区政府が、緊急人道支援として、難民キャンプへの受け入れを行っています。
トルコのシリア領域(ロジャヴァ「西クルディスタン移行期民生局」)内の侵攻
2019年10月の以下のような政治的動きが、イラクへの難民流入の背景になっています。
10月7日 トランプ政権がシリア北東部からの撤退を発表
10月9日 トルコ軍がシリア領域内でクルド人部隊の掃討作戦を開始
10月17日 トルコが一時停戦に合意(しかし小規模の攻撃が継続)
10月22日 トルコ、ロシア、アサド政権がシリア領域内のトルコの国境地帯からクルド人勢力を排除することを合意(ソチ合意)
国際政治的な背景については、より詳しく知りたい方は、例えば下記のようなキーワードで検索してみるとよいでしょう。
米軍シリア撤退 トルコ国境 安全地帯 シリア民主軍 SDF クルド人民防衛隊 YPG クルド労働者党 PKK
また、例えば、以下のリンク、地図もはいっており、わかりやすいと思われます。
この侵攻により、これまで(2019年10月14日~12月1日まで)に、シリア国内の国内避難民は30万人以上、イラクへの難民は1万7千人を超えると言われています。
イラク北部クルド自治区の難民キャンプ
イラク北部のクルド自治区は、イラク内では比較的治安が安定しています。
2013年からのシリア国内のISIS台頭時に多くのシリア難民(主にクルド人)が避難してきており、現在に至るまで長期化する避難生活を送っていました。
2019年9月の段階では、エルビル州に4か所、ドホーク州に4か所、スレイマニア州に1か所のシリア難民キャンプが設置され、さらに難民キャンプではなく町の中に暮らすシリア難民を加えると、23万人以上のシリア難民がイラクのクルド自治区での避難生活を送っていました。
※統計データについては、下記のUNHCRのサイトが参考になります。
https://data2.unhcr.org/en/situations/syria/location/5
2019年10月に新規設営・拡大されたシリア難民キャンプ
今回のシリアのクルド人地区トルコ侵攻による緊急人道危機に対応するために、イラク政府(特にクルド人自治政府)と、UNHCRを中心とする国連は、2つの難民キャンプで新規難民の受け入れを行っています。
- バルダラシュキャンプ(Bardarash Camp)
- ガウィランキャンプ(Gawilan Camp)
以下は、わたしの所属するNGOが取材の側面支援を行ったジャーナリストの方々の記事及び映像です。特に動画は、難民キャンプの雰囲気が伝わると思います。ぜひみてみてください。
- バルダラシュキャンプ、ガウィランキャンプの様子(2019年11月初め)https://news.yahoo.co.jp/byline/itomegumi/20191102-00149152/
- バルダラシュキャンプの様子(2019年11月末)https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3844952.html