辺境カフェ café frontière

辺境を愛する旅人の書

ラスパルマスのEco Hostel できいたウクライナのじゃがいもの話

スペイン領カナリア諸島ラスパルマスで休暇中です。

宿泊している宿、Eco Hostel Bettmarが面白い。

 

 
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旧市街にある古い南スペイン式(アラブ式)の中庭付きの家。部屋は5,6部屋で、すべてに二段ベッドを置いて各部屋6-8人ぐらいでシェア。共用スペースは、ラウンジ(兼食堂)、リビングルーム、キッチン、シャワー、トイレ、テラス。清潔でポップなインテリア。一泊14ユーロ(約1800円)と、長期滞在のバックパッカーのお財布にやさしい。Booking.comでの評価も高い。
 
滞在客は、スペイン人もいるし、ドイツ、ベルギー、オランダ、コロンビア、アルゼンチン、ウクライナ、スウェーデン、イギリス、中国などなど、世界各地から。若いスタッフが3人ぐらいいるけれど、彼らも旅人で、長期滞在しながら、ホステルの仕事を手伝うバイトなんだって。部屋がミニマルなので、ラウンジで過ごす時間も多くて、色々な人と会話をするチャンスがある。
 
長い黒髪のウクライナ人の女の子、トマからきいた話しが面白かった。モロッコにもここにも、ドイツやオランダからお年寄りがたくさん長期できている、キャンピングカーで長旅とか、なんて元気なお年寄りだ、という話題から、日本では年とってから海外で長期キャンプなんて人は、ほぼいないなあ、ウクライナでもそう、という話になって。
 
ウクライナでは、年をとったら、ふつうは田舎で畑をする。農家でなくとも、趣味で。ウクライナでは、じゃがいもが金のように考えられている。春から秋までじゃがいもを育てて、冬は倉庫がじゃがいもでいっぱいでないと不安、と、トマの両親や祖父母世代は考える。5トンとか、とても家族で食べきれな量のじゃがいもを作る。農家じゃないのに、趣味で!
 
土地を持っているのに荒地のまま放置するのは良くないこと、という慣習もあって、春になったら故郷の土地にじゃがいもを植え、秋になったら収穫するのが、家族の大切な行事。都会で会社役員をしているような人も誰でも、その季節には家族のじゃがいもにかりだされるので、1週間とか休暇をとる。土地があったらあるだけじゃがいもを植えるので、もう大変。「お母さん、私、仕事だってあるし、じゃがいもいくらでも安く買えるし、そんなに植える必要ないでしょ」と話しても、全然聞く耳を持たない。
 
トマは、話しがうまく、それを話している彼女の表情は、困っちゃう、という中にも、母国や両親への愛があって、とても微笑ましかった。
 
大企業のイケメン・ヤングエグゼクティブが、じゃがいも休暇って言うのが恥ずかしくて、海外旅行とか嘘ついて休暇とるけれど、実は部下の女の子たちはお見通しで、ばれてるのにわざわざ海外のチョコレートお土産に買ってきたりするのがかわいいって、モテるんじゃないかしら、とか、子どもが高校生ぐらいになって彼氏彼女ができたら、初めての相手家族との対面はじゃがいもの手伝いで、その時の働きぶりをみて、娘の彼氏をあの子はいいとか悪いとか、お父さんお母さんが評したりするんじゃないかしら、などなど、色々想像の翼が広がってしまった。
 
私もいつか、じゃがいもの収穫の季節に、ウクライナを旅してみたいです。