辺境カフェ café frontière

辺境を愛する旅人の書

人柄まるだしで仕事をする

ここでは「お客様は神様」ではない

モロッコで、商店や電話会社や役所の受付等での接客は、とても親切な時もあるし、あからさまにめんどくさそうに失礼な扱いを受ける時もある。

 

「お客様は神様」の日本から来た私としては、失礼な扱いを受けたら、「お客様に対して、その態度はないでしょ!」と、憤慨する。

シディイフニの、いなかののんびりした空気の中では、おおむね、みな親切で、あからさまに無礼な扱いを受けることはあまりない。が、それでも、お店で「○○はないか」と聞いた時に、無愛想に、ただ「ない」と言われ、以上、終了。みたいなことは、ままある。「なによ。ぶっきらぼうに。やる気ないのか。」と思う。

まあ、ほとんどの店では、そういう時は、少し申し訳なさそうな顔をするとか、「売り切れた」と言い訳するとか、「代わりにこれならある」とか、「あの店にいけばある」とかのフォローがある。

近所のパン屋さんのこと

そんな中、近所のパン屋さんの接客には、とても感激した。

そのパン屋さんでは、牛乳、卵、ヨーグルトなども売っているのだが、ある日、わたしが、「プレーンヨーグルトはありますか?」と聞いたら、「ワッハ(了解)」と言って、店の若い衆が、お金を握って、走って出ていった。近所のお店に買いにいったのだ。

あの店にならある、と教えてくれるパターンでも十分に親切と思っているが、わざわざ買いに言ってくれるのは、初めてみた。

別の日には、「クリームチーズはありませんか?」と聞いたら、また走って出ていったが、しばらくたったら、戻ってきて、残念そうにない、と答えた。その後、自分でも探してみて、クリームチーズは、あまり一般的な商品ではなく、町の中心の大きめのスーパーに行かないと売ってないんだな、ということがわかった。 と思っていたら、次にそのお店にいったら、ショーウインドウに、クリームチーズが!おお、わたしのために、わざわざ、入荷してくれた?すごいな、このお店!と感激した。

先日は、パンを買ったときに、「なんでも必要なものがあったら、言ってくれ」と言って、「たとえば、とり肉とか」というので、「とり肉も売っているの?!」とびっくりして、よくよく聞いてみたら、「とり肉を買ってきて、ローストチキンを作りたかったら、うちのオーブンで焼いてあげるよ。」と言っているのだ。

おお!そんなサービスあり?!パンやのオーブンでとり肉、焼いちゃう?!

もう、ここまでくると、これは、接客サービスの質が高い、というような話ではなくて、本当に、人としての親切で言ってくれているのだった。

個人商店のよさ

日本の接客は、コンビニやスーパーならこれぐらい、デパートではこれぐらい、市役所はこれぐらい、というように、おおむね接客レベルの予測ができ、どこに行っても、予測からそう大きくはずれることはない。

その予測、期待というのは、世界の接客水準で言えば、かなり高いレベル。海外旅行に行って、疲れちゃったりしたときには、日本の安定した礼儀正しい接客に、ほっとする。

しかし、逆に言えば、予想外のことは、ほぼ起こらない。良いことも悪いことも。特に、スーパーやコンビニなどの大手のチェーン店で、接客する人はほとんどパートさんアルバイトさん。その人自身の人柄で接客しているわけでなく、指導され教育された通りに、他の店員と同じように接客するので、どうしても自動的、機械的になる。

モロッコのいなか暮らしでは、ほとんど個人商店で買い物をする。自宅兼商店で、店の主人か家族が接客する。そこで、起こることは「接客」というよりは、むしろ、その店の人が、日常の生活を営み、商品の売買を通して、ご近所とコミュニケーションを行っている、という感じ。人柄がまるだしになる。いろいろな人がいて、接客レベルもいろいろ。

これは、日本だから、モロッコだからということでもなさそう。日本でも、田舎の個人商店に行けば、「○○さんのおばちゃんのとこで買い物」をしながら、いろいろな会話や交流をするような場面は、今でもあるだろう。だいぶ失われつつあるかもしれないけれど。

そういうコミュニケーションが、とても面白いなあ、よいなあ、いつまでもなくならなければいいなあ、と思う。

接客業以外でも

商店や接客業以外でも、ビジネスだから、仕事だから、と、よく言えばよそゆきでお行儀のよい対応、言い換えれば、個性を殺した機械的な対応をする、ということは、起こる。たぶん、その方が意外性がへり、イコール信頼性があがり、平均して考えたら、品質が向上するんだろう。

でも、仕事の場面だとしても、本当に心が動いたり、ブレイクスルーが生まれるのは、関わっている人の人柄が見えている時なんじゃないかな。なにより、その方が仕事が面白くなる、と思う。

働いている人が、十分な人間性を保って、多様な人柄を表に出しながら、働けるかどうか。それには、その人の自信や勇気も必要だと思うし、組織の経営方針が大きく関わってくるのではないか。なによりも、経営者自身が、その人間性を率直にストレートに仕事に持ち込んでいるかどうかが、大きく影響するように思う。

 

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