辺境カフェ café frontière

辺境を愛する旅人の書

シャンプーを使わなくなった

モロッコで海のそばの、いなか町で暮らしています。

その海でとれた魚を買って食べるし、砂浜の散歩もするし、(ときどき)サーフィンもするし、その海から立ち上る霧に町全体が包まれることもある。だから、海はできるだけ、きれいであってほしいと、自分のために感じています。

 

町の近くには、特に下水処理施設のようなものも見当たらず、生活排水は、さほど処理もせずに、海に流れ込むんだろうなと思います。

なので、ささやかながら、まずは自分の生活からだす排水、特に台所の洗いものと、シャワーの時のせっけんやシャンプーをできるだけ使わないか、天然素材のものにしたいと、考えました。

さいわい、今わたしがお手伝いをしている自然派化粧品工場では、せっけんも作っており、仕上げに表面をなめらかに削る時に出る削りカスを、タダでもらうことができます。ココナツオイル、パームオイル、アルガンオイルなど肌によいオイルを贅沢に配合した、自然な香りのせっけんなので、手にもやさしく、使い心地がよい。これで、台所の洗いものをし、顔や身体も洗います。

シャンプーの代わりには、ガスールを使います。ガスールとは、土地の人に天然のシャンプーやせっけんとして使われてきたアトラス山脈で採れる天然の粘土です。カラカラに乾燥した粘土が破片状になって売られているガスールを、お湯でといてペースト状にして、それで髪を洗います。粘土が汚れを吸着するので、すっきりし、粘土のミネラルやトロミでほどよい潤いも残ります。髪を洗いながら、顔や首やデコルテなども一緒に洗うと、頭皮はすっきりさっぱり、肌はしっとり潤います。

ガスールで洗髪するようになって、毎日洗髪する必要がなくなりました。二日に一度で十分です。市販のシャンプーを使っていた時は、毎日洗わないと、脂っぽくベタベタしたり、分け目がペタンとなり、匂いも気になりました。これって、たぶん、シャンプーの洗浄力が強すぎて、必要以上の油分が奪われ、それを補うために、頭皮の脂の分泌が増えていたような気がします。

先日、旅行に行った時に、久しぶりに合成シャンプーを使ってみたら、違いがよくわかりました。合成シャンプーだと、洗った直後は気持ちがいい感じがするし髪もきれいに見えるけれど、長続きしなのです。

ガスールで洗うようになったら、2日目ぐらいのほうが髪がきれいにみえるから毎日洗わなくなったし、なんだか髪の量も多くなった気がします。分け目がふっくらして、さわってみても髪の厚みでフカフカしていて、ペッシャンコにならない。リンスも整髪料も何も使わなくても、うまい具合にまとまっています。

日本にいる時は、洗髪は当然毎日するものって思っていたし、シャンプーの後はリンスを使い、乾かす時には、ヘアオイルなりトリートメントなりをつけ、そしてヘアワックスとかスプレーとかの整髪料まで、当たり前のように使っていた。髪をきれいにしておきたければ、毎日そういうのがすべて必要ということになっていた。

それって、気候や環境が違うせいもあるかもしれないけれど、それだけじゃない気がする。シャンプーメーカーは、みんなが毎日洗髪した方が、売上が伸びますよね。だから、毎日洗うことを前提にした商品開発をする。シャンプーだけでなく、リンス、トリートメント、整髪料とかも含めて、複数の種類を使うのが当たり前のようにしていく。そしてそれらを洗い流すために、毎日洗わないと心地よくない、と、なっていく。

うーん。これは、洗髪でなくて、洗脳だ。大量消費の洗脳だ。知らず知らず、踊らされていたんだなあと、今になって気づきました。